Story of my life

日常に転がる疑問を掘り下げるだけ掘り下げて放置

村上春樹「職業としての小説家」

 私はたまに本を読むのだが、村上春樹の本が好きだ。といっても、読んだことがあるのは1Q84以降の作品だけで、初期から中期の作品は読んだことがないのだが…


 これでファンだと言ってもガチ勢からはナメられるだろうが、とにかく彼の文章が好きなのだ。

 

 些細な違和感をずっと感じるような物語とでもいえばいいのだろうか、例えばいつもの場所に置いてある小物の向きが、少しだけ変わっている気がする…みたいな背筋が寒くなるような感覚。


 特に最新作の「騎士団長殺し」などは夜中に読んでいるとかなり怖くなったシーンがあった。ホラー小説でもないのに文章の力だけで恐怖を感じさせるなんて、プロの力は恐れ入る。


 そんなこんなでたまたま目に入った村上春樹のエッセイ「職業としての小説家」は、読んでいてすごく腑に落ちる内容だった。
なんとなく彼、というか彼の文章に感じていたことに近いことが書いてあったので嬉しくなったりもした。


 村上春樹の本を読んだことがない人からすれば、その名前を聞いただけで難しそう、といった感覚を持つらしいのだが、私としては全く逆だと思う。彼の書く文章はかなりシンプルで読みやすい。小難しい言葉も比喩も殆ど出てこない。


 唯一難しい部分があるとすれば、話のあらすじであろう。その小説が一体どういう話かということを説明しづらいのだ。ノンフィンクションからフィクションへ移行してく感じ…本を読み終わったとしても、物語としては描かれていないところでもずっと続いていっているようなエンドレスループ感…シンプルな文章をながら、話自体はとてつもない重みを備えるという矛盾を抱えた物語だからそんなふうに感じるのかもしれない。


 それまでの文脈に関係がないような例えを使ってみたり、敬語だったのが急にタメ口になったり、意味があるのかないのかわからない文もある。そこで読む人(私も)が勝手にドツボにはまってしまうということもあるだろう。


 この本は二年ほど前に買って、その当時も面白いと感じたが、今自分でブログで文章を書くようになってさらにこの本の言わんとすることが理解できた気がする。やはり物事を理解するには、自分でやってみるのが一番早いのだ。もし彼のことをもっと理解したいと思うなら、自分で小説でも書いてみるのが早いはず。


 物語を描くのは、誰にでもできることと彼は言う。そこでは自分は何者にもなれるのだと。そんな自由を味わってみたい。

 

お題「好きな作家」