仮面を被って、糸でぐるぐる巻きにされた人
先日、知り合いのバンドの女性ボーカルの人から相談を持ちかけられた。
傍から見ていたらわからなかったのだが、バンド内においては、なかなか重苦しい雰囲気になっているらしい。
リーダーの人のイメージ通りにやらないといけない
バンドメンバーと意見が合わない
ファンの人に付きまとわれる
などなど、かなりの葛藤を抱えていたようだ。
演奏する曲においても、その女性が思うイメージとリーダーの思うイメージが一致しない、好みでもない音楽を聞かされる…
しかしその行き過ぎとも思える指導も、志が高いがゆえの行動で、決して彼女のことを苦しめようとして言っているわけではない。
だからこそ、面と向かって「嫌です」ということも出来ないのだ。
私の知っている彼女は、仮面を被り、糸でぐるぐる巻きにされ、つるつるのパッケージに入れられた女性だったのだ。
多くの人が絡んでしまい、簡単に投げ出すこともできなくなった。
しかし皆の思うイメージ通りの自分を演じるのもつらいと。
私は彼女の素顔を知りたいのだろうか。
噂で聞いた、彼女は知り合いの愛人だと。
深入りするのはよしたほうがいいと、本能的に感じたのだ。
しかし一緒に食事に行った時点で、私もその片棒を担いでいる。
私の行動原理は、とにかく責任を負いたくない、それに尽きる。
噂は噂でしかないのだろうが、向こうも積極的に近づいてこないということは、自分から行って責任を負いたくないだけなのかも。
なんてデスノートのような精神攻防をしている私達。
全てただの思い過ごしで、二人で一緒に入れたらいいのかも、なんて思う。
きっとどれだけ好きでも、素直になれない相手とは、長い時間を一緒にいるのは難しい。
ずっと秘密を隠しておけるほど、人は強くない。
この文章にはあまりにも「~かも」が多い。何一つ確かなものがない。
先読みばっかりして、何が楽しいのか、自分でもわからなくなった。
仮面を被り、糸でぐるぐる巻きにされているのは、私の方なのかも。