どれだけ伝説を作れば気がすむのか! ポール・マッカートニー「エジプト・ステーション」
ごきげんよう。管理人の吉岡です。
今回は、ポール・マッカートニー「エジプト・ステーション」をレビューしたと思う。
ポール・マッカートニーって誰?
ポール・マッカートニーのことを知らない人が地球上にいるとは思えないが(言い過ぎ)紹介しておこう。
いわずとしれた世界一有名なバンド、ビートルズのメンバー。
ちなみにビートルズで存命なのはポール・マッカートニーとリンゴ・スター。
ビートルズ解散後もソロ活動を続け、今年76歳ながら未だ現役。
生ける伝説という言葉がこれほど似合う人物もいないだろう。
音楽性
タイトルの「エジプト・ステーション」という言葉にどんな意味が込められているのかはわからないが、インディージョーンズ的な、ピラミッド内部の迷宮に迷い込んだかのような音楽だ。
たくさんの音楽を聴いている私でさえ、こんな方向へ進む音楽というのは聴いたことがない、という曲が目白押しだ。
音楽は全て、コード進行というレールの上に沿って進む。
そしてコード進行には、ある程度のセオリーが存在し、特に日本は同じようなコード進行の曲が多い。
たくさんの音楽を聴き込めば、次はこっち方向へ進むな、、、というのが段々とわかってくるのだが、このアルバムの曲は「え?そっちいく?」というような曲が多い。
曲のアイデアも、まるで偶然叩いたドラムの音からひたすら妄想を広げて作ったかのような、遊び心を感じさせるような曲もあり、これだけの知識と経験を持ちながらも、あえてそれらに従わずに流れるままの音楽をすくい取っているという、ある意味悟りの領域に達しているようなアルバムだ。
半世紀以上のキャリアを持ち、ビートルズという世界で最も有名なバンドメンバーでありながら、これほどクリエイティブな音楽を今でも作れるとは、本当に神に近づいているかのような、ある種の恐怖さえ覚えるアルバムだ。
ポール・マッカートニーを写真や映像で見れば、彼はとても気のいいおじいさんにしか見えない。
しかしそのボーカルは、びっくりするくらいドスがきいていて鋭い。
この歳でこれほどの覇気をまとった声をだせるとは、これが覇王色の覇気というやつであろうか。
そしてアルバムを通して、難解であると感じさせずに、かつ底の深さを見せつける。
これは世界共通の素晴らしいアルバムを見分ける1つの基準だ。
そして世界はまたひとつ、素晴らしいアルバムを手に入れたのだ。
まるで迷宮のような音楽だ。
この世界に足を踏み入れるのは勇気がいる。
しかし、どれだけ奥深くに迷い込んだとしても、必ず出口に導いてくれるような、レット・イット・ビーでいうところの聖母マリアのような優しさが感じられるのだ。
おそらくこの安心感は、世界広しといえどもポール・マッカートニーにしかだせないだろう。
彼が今までにどれだけの音楽を作り出したのか、正確にはわからないが、これほど創造性に満ちた音楽を今でも鳴らすことができるのは、まさに音楽の神様に愛されているからであり、今度は彼自信がその存在に近づいているかのように思う。
創造性に満ちたアルバムを聴くと、不思議なことにまだ存在しない次のアルバムを聴いてみたい、という気持ちが湧いてくる。
それは決して今回のアルバムがつまらなかったという意味ではなく、まだまだ底が見えない、その先を見てみたいという好奇心を掻き立てられる、という意味だ。
私はそこまでビートルズを聴き込んでいるわけではないので、単純に比較はできないが、もはやビートルズという看板が必要ないくらいのレベルだ。
彼はまさに、ソロミュージシャンのポール・マッカートニーなのだ。
総合評価
革新性5
演奏力4
個性4
アレンジ5
バランス5
総合5
Paul McCartney - I Don’t Know (Lyric Video) - YouTube