新しい旅路
とある経済学者によると、2030年頃には人々は生活の為に働く時間が大幅に減るという。
この仮説がたてられたのは何十年も前、まだコンピューターも存在しなかった時代。
しかしその経済学者はコンピューターの先にあるAIさえ予想していたのだ。
これから先の高齢化社会を通り過ぎた未来、大幅な人手不足により、大部分の仕事はロボットが担うようになるという世界の話は聞いたことがあるだろう。
生活のために働く時間が減るというのは、そこだけ聞けばいいことのようにも思えるが、実際問題そうでもない。
それはつまり、余暇の時間が増えるということ。
仕事に対してあれこれ文句を言う人は多いが、その一方で、仕事以外にやることがない人が多いのもまた事実なのだ。
というより、現実に対して不満を言う人の方が、本当のところは仕事に依存している傾向さえあるだろう。
家に帰ってもやることがない、もしくは家族に文句を言われるのでだらだらと残業しているサラリーマンは多い。
もし本当に働く時間が大幅に減る未来が到来したら?宝くじが当たるなどしてもう働かなくてもいいほどの大金を手にしたら?
それだけで本当に幸せになれる人は、おそらくほんの一握りであろう。
もう余計な仕事はしなくてよくなるのに、することがない人々はどうなってしまうのか?
社会が不安定になるのか。
義務教育の段階で雇用される側としての教育ではなく、雇用する側としての教育が増えていくのか。
酒や煙草や博打が社会に蔓延するのか。
なぜ暗い未来ばかりが思い浮かぶのかといえば、やはり我々は知らず知らずのうちに誰かの指示を待っているのかもしれない。
人に自分のやることを決められることに慣れてしまえば、自分の人生をコントロールしようという発想が思い浮かばない。
自由になった社会になってから慌ててもおそすぎる。
少なくとも私のような年齢以下の人々はそういった社会になることを覚悟しておいたほうがいい。
不満がなくなれば選挙をする意味もなくなり、社会主義のような時代になっていくかもしれない。
どちらにしろ結局は、自分のことを自分で決めなければ、どれだけ豊かになろうが、どれだけ自由になろうが、幸せにはなれない。